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森ちゃんの修理ブログ#14 ご実家からの引っ越しです

2016年8月24日

こんにちは 森です。ご無沙汰いたしております。

 

今回のお客様 I様は千葉県N市のご実家より大阪S市のご自宅までの移動です。

I様より電話でお伺いした状態から判断した森ちゃんの診断は、ケース部分補修+内部修理クリーニングです。

本来ならお伺いしてピアノを検品して修理コースを決定し、金額を見積るのですが、出張するとその費用が修理コストに加わるので、お客様の為になりません。

そこで、私の経験からお客様のお話の中ででピアノを想定して判断します。

その後ピアノを引き取ってからピアノを検品し、想定外の異常の有無を確認しお客様と最終の修理行程・金額の打合せを行います。

しかしながら今まで99%は引き取り前の修理コース・金額で修理に取り掛かっております。

 

今まであった想定外の異常は、

「鼠の居住空間になっていた」

「到着したら屋根が取れていた」、

「脚が折れていた」

などです。年間1000台以上修理しておりますのでたまにはこんなケースにぶつかります。


 

さて、今回の修理ですが、上側が修理前。下側が修理後の画像です。
 

ピアノはアポロ Aー8 1979年製造で、約37年経過しています。

これくらいの年月が経過しますと、外装の塗装劣化は避けられません。

①の全体の様子・②鍵盤蓋部分の写真を見て頂くと解るのですが、綺麗なお部屋に置くにはちょっとと考えてしまいます。


 

①外装全体の様子(修理前)


 

①外装全体の様子(修理後)


 

しかし、この程度で大掛かりに費用を掛けることはお客様の為になりません。

最低限の費用でどこまで出来るかが、メーカーの自負です。

 

此のピアノは弊社のAPOLLOですが、メーカーである私たちには どこで製造したかは関係ありません。

それぞれのお客様には、長年手元に置いて親しんでこられた思い出があったり様々な事情が有ります。

だから我々は、どんなメーカーが作ったピアノでも全力で修理しますし、それが出来る技術力を常に持ち続けています。


 

②鍵盤蓋部分(修理前)


 

②鍵盤蓋部分(修理後)


今回の修理コースは部分補修+内部修理クリーニングコースです。

 

打ち傷と塗膜の劣化による曇りと汚れが激しい状況が見受けられます。

腕木の打ち傷は、傷跡を穿って、黒の塗料で埋めて耐水ペーパーで研磨します。

600番・1000番・1500番と研磨剤の大きさを少しずつ細かくした耐水ペーパーで平滑に研削していきます。


研磨剤:溶融アルミナ研磨剤・炭化ケイ素研磨剤
600番:   20.0±1.5ミクロン  (累積高さ50%の粒子径)
1000番:  11.5±1.0ミクロン  
1500番:  8.0±0.6ミクロン
  (1ミクロンは1/1000ミリメートル) 

こんなにも細かな耐水ペーパーで研磨して其の上、1ミクロン以下の粒子を使ったコンパウンドで研磨し艶を出します。


 

③腕木と鍵盤蓋部分(修理前)


 

③腕木と鍵盤蓋部分(修理後)


 

金属部品についてはやはりコンパウンドで研磨します。真鍮は銅と亜鉛の合金なので時間が経つと表面に酸化被膜ができます。此の被膜は内部腐食を防ぐ働きがありますが、見た目はあまり良くありません。

ひどくなると青緑色の緑青と言われるものが出来ます。昔は猛毒だと云われていましたが現在ではほとんど無害だと証明されているようです。

此の被膜のおかげで錆が中まで浸潤していないので、表面の酸化被膜を取り去ると、元の新品の時の輝きが蘇ります。


 

④ペダル(修理前)


 

④ペダル(修理後)


 

⑤譜面台蝶番(修理前)


 

⑤譜面台蝶番(修理後)


 

今回内装の消耗部品については、交換までする必要はないと判断致しました。
弦とかチューニングピン・ハンマーなどを交換すると、そこそこの費用は掛かります。
多少は消耗していても、調整すれば使える場合も結構あります。修理のお客様の大半は30年前後昔に購入されたピアノで、部品交換まで必要のないケースが多いです。

中には60年程経過しているピアノも修理を依頼されますが、この場合塗装塗り直しと消耗部品の交換が必要な場合が殆どです。

部品交換の必要のないものでも長期間ではフェルトも劣化します。劣化したフェルト、虫の食ったフェルトは新品と交換します。


 

⑥チューニングピン・弦(修理前) 


 

⑥チューニングピン・弦(修理後)


 

その他に手間のかかる部分は、

・駆動部の関節に当たる部分の劣化・錆による作動不良(1台のピアノで600か所以上の駆動部があります)の修理    

・整調と呼ばれるピアノを正常に作動させる為の細かな調整   

・狂った音律を正常に戻す調律作業

など

目に見えない作業が多く存在します。目には見えなくても必ず行わなければなりません。


 

チューニングピンと弦は消耗していなければ錆を落とせば大丈夫です。

しかしながら、鉄の錆びは、真鍮の酸化被膜と違い、中までどんどん浸潤し終いにはボロボロになっ
てしまいます。早めのさび落としが必要です。

チューニングピンは鍍金(メッキ)をしておりますが、調弦・調律時には、どうしても表面が傷つきます。

そこから錆が広がる場合が往々にして発生します。

弦の劣化については、ピアノの場合常時弦を80kg前後の力で引っ張っている為 金属疲労が蓄積します。

またハンマーが弦を打つ衝撃で金属疲労が起こります。

ピアノの使い方で消耗部品の寿命は変わってきます。


 

鍵盤は昔は象牙を白鍵に使うことが多かったのですが

アフリカ象が密漁で減少する事態となり 

ワシントン条約(1971年。7月1日発効・・・日本は1980年11月4日条約国となった)が整備され取引が禁止されました。

その結果、白鍵に象牙が使われることは殆ど無くなりました。条約発効以前の輸入品在庫が今
でも残っている場合があり多少は使われています。

その様な訳で今では殆どがアクリル樹脂になっています。現在では人造の象牙様の物も出回っております。
白鍵は、長い間にはどうしても傷つき、変色する場合がありますが、基本的に研磨する事で、かなり白くなります。

象牙の場合漂白をすればそこそこ綺麗になりますが、漂白は象牙を痛めるので、3回から4回にとどめておく方が良いと思います。

尤もダメに成ったら張り替えれば事は足ります。アクリル樹脂にしたから弾けなくなるとか、そんなことは一切ありません。

費用3万前後というところでしょうか。


 

鍵盤・鍵(修理前)


 

鍵盤・鍵(修理後)


 

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