SSS(スリーエス)の開発秘話

 私がこの業界に入ったのは、昭和32年のことです。学校時代の友人からの誘いによりピアノにたずさわるようになりました。 学校では建築を学び建築業界に進もうと思っていましたが、当時建築業界は大変な不況でその業界に入る事をあきらめました。

 はじめは技術部長の助手ということで東洋ピアノの事務所の二階に住み、就業時間内は技術部長の助手をしながらピアノの設計技術を勉強し、 そして5時以降はほとんど毎日の様にアップライトピアノ・グランドピアノの組み立て、整調、調律の技術を勉強し、昭和37年に全国ピアノ技術者協会(現在の日本ピアノ調律師協会)に入会しました。

 昭和44年頃グランドピアノのアクション機能に魅せられ、アップライトピアノでもグランドピアノと同じ様な機能を持つアクションは出来ないものかと、常時頭の中をその思いが駆け巡っていました。



通常のアップライトアクションは次のような欠点があります。

  1. グランドピアノアクションに比べソフトペダルによる音量、音色の変化をさせる効果が少ない。
  2. 通常のアップライトアクションはソフトペダル使用時に鍵盤にタッチした瞬間にわずかの無抵抗(ロスタッチ)の時間(キーの沈む量)があり、これが最大の欠点となる。
  3. グランドピアノに比べて早い連続打が出来ない。

 以上の様な問題をどの様に解決したらよいか、品質の問題、コストの問題、生産性の問題等を製図板の上で構想を練り、一本の線を引くのに0.1秒で引ける線もあれば、3日たっても、あるいは10日たっても決定出来ない線もあります。 その間、頭の中で構想をかけ巡らしている・・・この世の中にない新しい物を開発するには、多かれ少なかれこの様な状態におかれます。

 日常の業務をこなしながら、この構想が芽生えて完成するまで約20年間は、頭の中は昼夜を問わず、この事に没頭しました、また、遊んでいる時、テレビを見ている時、酒を飲んでいる時、一時の空白があれば、この事が頭の中を駆け巡っていました。 この様にして昭和58年に技術的な問題はすべて解決し、構想は完成致しました。このシフト(ソフト)機構はこれから先、世界中のアップライトユーザーの心をつかむのではないかと自負しています。

平成18年2月
東洋ピアノ製造株式会社
技術開発 開発者 佐藤 勝


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